アメリカのCEOとの面談で「Let’s do it(やろう)」という言葉をもらったその瞬間から、実際の“販売”に向けた準備が始まりました。
しかし、そこにはまた別の壁が待ち構えていたのです。
それが「価格設定」でした。
アメリカと日本の“距離”が壁になる
私の中で決めていたことがありました。
それは——できる限りアメリカでの市販価格に近い値段で、日本の皆さんに届けたい。
当時、私の会社では他にもいくつかの輸入商品を扱っていたため、販売価格の設計方法には慣れていました。
でも今回のファストホワイトは、単なる「商品」ではなく、自分の原点から続いてきた想いの結晶だったんです。
「これは儲けのためじゃない。できるだけ多くの人に使ってほしい」
そう心に決めていました。
最大の敵、それは「送料」
ところが、最大の障壁がここで現れました。
“送料”です。
ファストホワイトは個人輸入という形をとっているため、アメリカの工場から日本のお客様一人ひとりに国際郵便で直送されます。
この送料が非常に高く、現在では**1件あたり約40ドル(約6,000円)**にもなります。
しかもこの送料は、交渉ではどうにもならない「決定価格」。
私たちがどれだけ努力しても、削ることができないコストでした。
削るべきは、仕入れか?利益か?
となれば、あとは仕入れ価格と当社の利益。
利益を削れば安くはできますが、それではビジネスが続きません。
利益をゼロにすれば、「今回限り」で終わる。次に届けることができなくなってしまいます。
「じゃあ、仕入れ価格をどうにかするしかない」
私はそう判断し、FastWhiteのメーカーに改めて交渉しました。
「このビジネスは、必ず大きくなります」
何度も何度も話しました。
最初は「注文数が少ないからこの価格は無理だ」と言われました。
でも私はあきらめませんでした。
「日本には確実に“白い歯を求める人たち”がいる」
「これは一時的な商売ではなく、長く続けていきたいんです」
「だから、今こそ協力してほしいんです」
——そうやって粘り強く説明した結果、メーカーも理解を示してくれ、可能な限りの卸価格にまで下げてもらうことができました。
本当に感謝しています。
いくらなら買ってくれる? 価格の答えは、現場にある
でも、それでも「この価格で売る」と決めるには、もうひと押し必要でした。
そこで私は、サンプルを配って、できるだけ多くの人に実際に使ってもらうことにしました。
そして聞きました。
「もしこれを買うとしたら、いくらだったら買いますか?」
いただいた声を一つひとつまとめていき、調整を重ねた結果、当初の販売価格は**9,800円(15年前)**に設定することになりました。
そして、今
現在は円安と国際送料の上昇もあり、12,800円という価格でご提供しています。
でも、正直に申し上げて——これはギリギリの価格です。
なぜなら、アメリカでの市販価格は**$119.95(=約19,000円前後)**です。
つまり、日本の価格は「ほぼ原価」に近いところまで落としています。
それでも、私はこの価格を守りたい。
理由はシンプルです。
「あの頃の自分のように、“白い歯にあこがれる誰か”の手に届いてほしい」
それが、今でも変わらない想いです。
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